「ゼウスのしもべ"アルテミス"」

 現在『イブニング』で連載されている『金田一37歳の事件簿』の最初の事件『歌島リゾート殺人事件』の真犯人「第四のファントム」麻生早苗「ある人物」にこう呼ばれていた。

 麻生は最初は太っていたが「ある人物」と出会い、彼から
 「まず"美"を身につけるといい」
 と言われたのをきっかけに、やせた。
 
 その「ある人物」とは…

 …何と、地獄の傀儡師・高遠遙一だったのだ!!
 これが『金田一37歳の事件簿』の第15話…最新話で明かされたのだ。


 【高遠遙一(ゼウス)のしもべ・アルテミス】

 そもそも『金田一37歳の事件簿』の主人公・金田一一明智健悟警視長と「剣持のオッサン」こと剣持勇元警部とともに特別重要犯拘置区画にいる高遠のもとを前回第14話で訪れたきっかけは、麻生が歌島リゾートでの件について高遠と高遠の"しもべたち"のことを喋ってしまったことだった

 高遠は
「同窓会のお誘いかな?」
「(金田一君は)どこかの会社の主任でもされているのかな」
「金田一くん、久しぶりに活躍したそうじゃないですか」
と、とぼけていたが、はじめはこう言った。

 「とぼけるなよ高遠!
 あんたはよく知っているはずだ。
 殺人鬼『麻生早苗』のことを…!」


 ・・・麻生は明智警視長に「話したいことがある」と言って
 『天才的な犯罪芸術家』…つまり高遠の事を話した
 
 すると明智警視長は顔色を変えて
 「高遠遙一…!
 地獄の傀儡師を名乗って数々の犯罪に手を染めてきたあの男のことか?」と言った。


 ・・・麻生は高遠と出会うまで、すでにサギだの色々やらかしていていたが、ツメが甘く色々追い詰められていた。
 そして高遠と出会った日、高遠もスキを見て殺そうと考えていたが、高遠

 「あなたは"アルテミス"をご存知ですか?」と聞いてきた。

 麻生はアルテミスと言われて「『貞操』は一番縁遠い言葉」と言っていたが、
 「だからこそ、あなたは私のアルテミスだ…!」高遠に言われた。
(※ちなみにアルテミスはギリシャ神話のオリンポス十二神の貞操を司る女神。)

 高遠は麻生の女の貞操を信じる男たちを手玉に取ってきた犯罪センスを高く評価し、麻生に更に良い知恵を授けようとしていたのだ。
 麻生に美を身につけるための資金は、高遠が全て出していたのだ。

 ・・・麻生が高遠のことを喋ってしまったことについて高遠
 「やれやれ…!そこまで話してしまいましたか。
 いけませんねそれは。
 彼女には失望した!」
 と言っていた。

 これを聞いた明智警視長は高遠に

 「"十二神"と言うからには、ゼウスを名乗ったあなたと麻生早苗以外にも
 十人の"神"がいるのではありませんか?」

 と聞いた。
 「どういう意味かな?」ととぼける高遠に剣持のオッサン
 「他にもお前が犯罪を仕込んだ弟子どもがいるんじゃないかと聞いてるんだ!」
 と言った。

 すると高遠は
 「仮にいたとしても彼らはもう私の手を離れている。
 虜囚の身である私が彼らの行動をどうこうできるはずないでしょう?
 私は何重にも閉ざされたこの特別拘置室でただ死刑判決を待つだけの哀れな存在なのですから。
 ねぇ?金田一くん」
 と言った。

 はじめは回れ右をして
 「行こう!明智さん、剣持のオッサン。
 これ以上話してもムダだよ。
 この男の目を見ているだけで考えてることはよーくわかった」
 と明智警視長と剣持のおっさんとともに去った。
 
 …はじめの後ろ姿を見て高遠はこう思った。

 「(平行線――
 僕達の平行線はまだ続いていたんですね、金田一くん
 また訪ねてきて下さい金田一くん
 昔話でもしましょう
 グッドラック)」

 
 …一方、ふと高遠を振り返ったはじめ
 すると
 「(金田一くん…! ――助けて!)」
 と。誰かがはじめに助けを呼ぶ声が脳裏に浮かんだ…。

 ―― はじめを呼ぶ声は、幼馴染の七瀬美雪か?
いとこの金田一二三か?
それともアイドルの速水玲香か…?
それとも別の人…? ――


 【高遠の連絡手段!?】
 
 はじめと明智警視長と剣持のオッサンが去った後、高遠は読んでいた『モンテ・クリスト伯』のページを折ったり破いたりした後、看守に「読み終わったから捨てて欲しい」と頼んだ。

 ちなみに特別拘置室の高遠には、作中に登場した看取の話によれば全国から大量の本が差し入れされていたという。
 また特別拘置室からのゴミは資源ゴミが多かった。
 そしてネットでは高遠のファンクラブがあるという。
 看守の一人は「殺人鬼にファンクラブ?世も末だな」とつぶやいていた。

 ・・・ゴミ捨て場を去る二人の看守。
 その様子を見ていた白い帽子をかぶった人物が、
高遠が捨てた『モンテ・クリスト伯』の本を回収した…!

 ―― もしかして→『はたらく細胞』の血小板 
 前を見ると「血小板」と帽子には描かれている… ←違う

 …という冗談はさておき、高遠は捨てた本のページを破ったり折ったりした暗号で
外の仲間…高遠の弟子や協力者と連絡を取り合っているようだなあ。 ――


 【麻生早苗の最期】

 後日、麻生早苗に差し入れが届いた。
 何年も音信不通の麻生の母からだという。

 衣類と使い捨てコンタクトと食べ物が入っていたがそれは没収されていた。
 
 「ダサい衣類はともかくコンタクトは有難いわ。
 気が利くじゃんあのババァ!」麻生は使い捨てコンタクトを使ったが、
 目がゴロゴロし染みる違和感を覚えた。
そして激しく咳き込んで倒れ込み、やがて心肺停止に陥り亡くなった

 ・・・はじめは明智警視長から剣持のオッサンを通してそのことを知った
 
 問題のコンタクトレンズは生前の麻生が言っていたように欠陥品ではなく
 鑑識が調べたところ、猛毒のVXガスが付着していたという。
 「細い針の注射器でコンタクトレンズの内側に付着させた上で針の穴を瞬間接着剤のようなもので塞いでおいたのでは」
というのが鑑識の見解だった。

 また、麻生の親は「そんな物を送った覚えはない」と話していて剣持のオッサン
「おそらく親の名前を騙った何者かが殺害目的で送りつけた」と考えていた。

 はじめは高遠の発言から
 「まさか…!高遠が…?
 いやそんなバカな…
 奴は拘置所で裁判を待っている。
 そうだよな?オッサン」
 と言った。

 すると剣持のオッサン
 
 「これだけは言えそうだな。
 奴は――高遠遙一は今でも"地獄の傀儡師"なんだよ」

 と言った。


 ・・・はじめは会社でも高遠のことが頭を離れずこう思っていた

 「冗談じゃない!冗談じゃねーぞ
 向こうは現役でもこっちはそーゆー気分じゃねっつーの
 俺はもう謎なんて…」

 …突然首のところに後ろから何者かにスプレーを吹きかけられ、
 「VXガス!?」とびっくりするはじめ。
 スプレーを吹きかけたのは部下の葉山まりんだった。

 はじめは汗止めスプレーのPRの仕事をまりんと二人ですることになったが、
 はじめ「一応成分を見せてほしい」と言っていた…。

 ・・・こうして『歌島リゾート殺人事件』は、幕を下ろした…。


 ―― 麻生早苗は『ゼウス』と名乗る高遠遙一に
「ゼウスのしもべ」「犯罪の女神アルテミス」と祭り上げられていたようだが、
結局のところ、高遠にまんまと利用された傀儡の一つに過ぎなかったようだなあ…。 ――

 でも獄中で麻生について「失望」と話していたことから
麻生を高遠は実は高く買っていたのかも
…。

 それにしても麻生にVXガス入りコンタクトレンズを送りつけたのは
高遠の仲間の一人っぽいなあ。

 VXガスといえば現実のオウム真理教で、
高遠遙一はまるでそういう系統の宗教団体の教祖みたいだなあ。
 特に高遠が捨てた『モンテ・クリスト伯』で高遠の協力者に伝えたのは
「ポアしなさい」みたいな意味の麻生の殺害命令だったのかも

 つまりは『高遠遙一オウム真理教説』浮上、といったところか…。  

 …また自分は『歌島リゾート殺人事件』第14話の感想で事件について

 『実は高遠が麻生に手を貸していた』
 『(高遠の犯罪を犯人が)知り得たとしたら小学校高学年か中高生になりインターネットが使えるようになり、高遠のことをインターネットの裏サイトや地下出版での書籍などで知る必要がある』

という感想を書いたが、第15話

 「高遠は歌島リゾートの事件に直接関わっていないけれども、
 麻生が(犯罪のクオリティを上げるために)やせるきっかけをつくった」

 「高遠のファンサイトがある」

 という大きな動きがあることが明らかになり、
しかも高遠にはオリンポス十二神になぞらえた「弟子」がいることもほのめかされたなあ。
 …特に犯罪に長けている人物はオウム真理教でいえば「幹部」だろうか…。

 そして用済みとなった幹部・麻生早苗の殺害命令を『モンテ・クリスト伯』の本を利用して外部の仲間に麻生早苗殺害命令を伝えたかのような行動も、オウム真理教を彷彿とさせるなあ。
 
 もっとも現実の麻原彰晃は今のところ、高遠のように逮捕されながら外の仲間に殺害命令を暗号で巧みに伝えるようなことはなかったようだが…

 今回の話から、高遠は空白の20年と思われていた時期に
弟子や協力者を少なからず作り、
一種の宗教団体『高遠真理教(仮)』を作り上げていたようだなあ。
 実際高遠は、麻生早苗を間接的に始末するのに仲間を通してVXガスを使ってたし…。

 
 ・・・さて次回はどんなエピソードが待っているのだろうか。

 今回出てきたはじめの助けを呼ぶ声に関するものかな。
 「もう謎は解きたくない」とはじめに言わしめた事件に関するものかな。
 あるいはオリンポス十二神になぞらえた高遠の弟子(傀儡)たちと対決するのかな。

 特に次の事件では『金田一少年の事件簿』に登場した誰と再会するのか、楽しみだなあ。

 
 【ソース】
 イブニング 2018.9.11 NO.18
 『金田一37歳の事件簿』
 歌島リゾート殺人事件
 File15 終わらない平行線
 講談社 (P175~P197)