現在『イブニング』で連載中の『金田一37歳の事件簿』
『函館異人館ホテル新たなる殺人』が展開中。
 この事件は20年前に金田一一が解決した『異人館ホテル殺人事件』の舞台となった異人館ホテルで舞台『箱館ウォーズ』の出演者・赤座光輝綾野木ルカが舞台イベント本番中に水島颯太が撃ったモデルガン…ではなくすり替えられた拳銃で射殺され、さらにその水島も後に自殺に見せかけられ手首を切られた状態で舞台に地上から4mはある高さにワイヤーで吊るされていた。
ちなみに「4m」は東京のリュウ小野寺殺しの真相を追って異人館ホテルにやってきた幸村真之助警視が調べた高さ。
 ちなみに前回第7話で、彼ははじめにこう言っていた。

 「ワイヤーで吊り上げられてる状態の水島氏のもとに10メートルはあろうという天井から降りてきて殺害するような離れ業は困難だし、かといって4メートルの高さの脚立は舞台はもちろん楽屋のどこにもなかった。
つまりこの状況下ではどう考えても"他殺"はありえないんです!」

 【幕】
 前回第7話では、はじめはから火薬のにおいがすることが気になっていた。
はじめの助手(※自称)…部下の葉山まりんと、佐木竜二、そしていつき陽介も幕の合わせ目がにおっていることに気がついた。
 そして直近の第8話はじめは、幕の左側が強く火薬のにおいがするが、右側はあまりにおいがついていないことに気がついた。

 はじめは言った。

 「俺達は根本的な見落としをしていいたのかもしれない。
 真犯人・碧血鬼の巧みな心理的ミスディレクションにまんまと誘導されていたんだ!!」

 「心理的ミスディレクション」佐木が言うには
「最初の印象で真相とは違う方向に持っていかれちゃうこと」

 このことからはじめ
 「幸村刑事がやっていたアリバイ検証は何の意味もなくなり、根底からひっくり返る
と考えた。


 【城壁セットの滑り台】
 幕のにおいからはじめがふと思ったのは、綾野木の死について。
 佐木に、綾野木ルカが城壁の上で撃たれた映像を見せてもらっていた。
 佐木ははじめにタブレットに保存していたくだんの映像を見せてもらった。
 
 はじめは城壁の裏には滑り台があり、綾野木は撃たれた後に滑り台に倒れ込み、一気に舞台袖のマットに着地したことを知り、
 いつき「撃たれたときの血痕が残っているか」を聞き
 「22口径は弾が小さいらそう大した出血にならんだろうが、ちゃんと調べれば出てくるんじゃないか」
という答えを得、
 佐木「この城壁のセットはまだあるよな」と聞き、
「大道具置き場にあると思う」
というう答えを得た。
 

 【ついに登場!『箱館ウォーズ』の台本の中身!】
 はじめは水島の壇はるみマネージャーから『箱館ウォーズ』の台本を見せてもらった。
 それを見ると、

 「葵を演じる綾野木が伊庭を演じる水島に撃たれもがきながら倒れ舞台袖にはけ
同じ城壁の上にいたジュールを演じる刈谷ユダがはっと水島を見下ろす

という旨のト書きが書かれていた。

 涙を流しながら水島が
「この悲劇を終わらせるにはこれしかなかった…!」と銃を構える姿を唖然と見ている
榎本を演じる中神聖也、大鳥を演じる五代玄一郎。」
 「山田を演じる最上翔太の後ろから黒沢を演じる赤座が突進し、
水島に切りかかり剣闘が始まる。」
「水島、赤座を突き放し、赤座たおれかかる」

と続き…


 『伊庭、黒沢を撃つ』
(音楽・効果音)

とあった。

 その後は、

 『黒沢撃たれて昏倒』とあり、

 「最上が赤座に駆け寄る」と続いていた。


 …ちなみに壇マネージャーはこの時は、演出の海枝博貴とともに関係者席にいたと話していた。


 【謎の衣装変更】
  ところで壇マネージャーは衣装を整理中にちょっと変なことを感じていた。
 それは水島の"遺書"について。

 ゲネプロが終わった後水島
 「白い衣装は自分が主役でないのにイキった感じの死に装束みたいな衣装は違和感がある。
 主役の岡倉純が内心イラついてると思うから普通の衣装でよくないですか。」

と海枝に言って、水島自身が衣装変更をしたという、

 …要するに「水島は本番で問題の白い衣装を着る予定はなかった」

 壇マネージャーはそのことは公演直前に衣装さんを通して聞いたが、
 
 「なのにどうして遺書では"着るはずだった"と言ったのか」ということを疑問に想っていた。

 ・・・壇マネージャーから話を聞いたはじめは、佐木の言葉を借りれば
「なにか重要な発見をして頭の中がフル回転して周りが目に入らなくなった、
事件の核心に迫る大きな手がかりを見つけた」

そんな状態になっていた。


【城壁の下の方に…!】
 舞台に向かったはじめたち。
 警官は何人か残っていて、現場はだいぶ片付いていた。
 たくさんあった大道具はまりんが見回しても舞台袖にもなかった。

 佐木が言うには地下の"奈落"にしまっている、
 …ということで地下に向かった。

 ちなみに大通具は、佐木は「"せり"を使えば楽勝で運べる」ことをまりんに話していた。
 
 …「城壁の上に血痕があるかどうかを確かめに行こう」いつきは言っていたが、
はじめはいつきが言っていたこととは逆にしゃがみこんで問題の血痕を見つけたようだった。

  そしてはじめは言った。

 「犯人は水島颯太殺しにも思わぬミスディレクションを仕掛けてきたんだ。
 謎がすべて… 解けちまった…」

 

 ――幸村警視が言っていた『4mの高さの脚立』は
綾野木と刈谷が立っていた城壁セットなのでは。
 その城壁の上から下まで万遍なく使って綾野木殺しと水島殺しが行われたのでは。
 城壁セットは幕の近くにあり、その幕から火薬のにおいがするということは、
少なくともそのごく近く…例えば幕の合わせ目のあたりで実は発砲があったからなのでは。――

 今回の事件は、綾野木は水島に撃たれて死んだのではなく、
台本通り伊庭役の水島が黒沢役の赤座を撃つタイミング(※『伊庭、黒沢を撃つ』)で
舞台袖にいた犯人に上からの発砲で撃ち殺されたのでは。

 そういえば、第6話例の水島のメール(遺書?)が来た時幸村警視「舞台に行ってみよう」と言っていたけど、彼がそれを言う前に、刈谷は「衣装を纏う」という一節から
 「各自の衣装は控室においてあるはずだからデスペラードの控室にいるんじゃ」
 と言って幸村警視を誘導していたなあ。

 …これは水島の遺体発見状況を確実に完成させるためのいわゆる時間稼ぎ、かな?

 それが第8話の終わりのほうではじめが言っていた
 「思わぬミスディレクション」とやらなのでは…?

  水島が残した(?)遺書とやらは、客観的に舞台に水島がいることを示すと自分は思うのだが…。

 
 …もし今回の事件の犯人「碧血鬼」が自分が考えている人だとしたら、年の離れた親しい家族や親戚のような気がするなあ。

 そして今回の事件では、『金田一少年の事件簿』の『異人館ホテル殺人事件』にあった「双子」要素が出てくるか、気になるなあ。
 前の事件の『京都美人華道家殺人事件』みたいに…

 【ソース】
 『イブニング』 2020.01.14 NO.02

 『金田一37歳の事件簿』
 『函館異人館ホテル新たなる殺人』

 File47 ミスディレクション
 講談社 (P177~P198)