現在『イブニング』で連載中の『金田一37歳の事件簿』は
『函館異人館ホテル新たなる殺人』が展開中。
この事件は20年前に金田一一が解決した『異人館ホテル殺人事件』の舞台となった異人館ホテルで舞台『箱館ウォーズ』の出演者・赤座光輝と綾野木ルカが舞台イベント本番中に水島颯太が撃ったモデルガン…ではなくすり替えられた拳銃で射殺され、さらにその水島も自殺に見せかけられ舞台の高所に手首を切られた状態で殺されていた…、というもの。ちなみにこの事件ではリュウ小野寺という元アイドルグループ「デスペラード」のメンバーのミュージシャンが東京で殺されており、それを密室殺人と推理した幸村真之助警視も異人館ホテルに捜査にやって来た。
小野寺の遺体が握っていた『箱館ウォーズ』のチケットを見つけたので。
またはじめは、幸村警視にこの事件の犯人ではないかと疑われてしまった。
はじめはもう謎は解きたくないけれども、幸村警視の捜査を手伝うことにしたのだ…。
【幸村警視の推理】
五代玄一郎
「ウ…ウソだろ?
じゃ…さっきソータから届いたこのメールは遺書…!?」
刈谷ユダ
「で…でもまてよ?このメール…
この『惨劇の幕を自ら下ろすことにしました』って文面…
"自ら"って言葉が"惨劇"にかかってるとしたら、
その"惨劇"を起こしたのは"自分"だって意味なんじゃ…」
壇はるみ
「それじゃあ…」
海枝博貴「水島くんが自分で二人を殺したと言ってるみたいじゃないか!」
舞台で水島の遺体を発見した関係者達に対して幸村警視は
「誰かが銃をすり替えたにせよ自分がやったことだったにせよ、
赤座さんと綾野木さんの命を奪った銃弾は彼の手によって発射されたものだ。
その責任を取るという意味なのかもしれませんね!」
と言った。
そしてワイヤーを上下させる仕掛けの場所を海枝監督に聞いた。
その仕掛けは舞台袖にあり、自分で操作することもできそうでワイヤーには長さがあり上がる時はゆっくりなので、自分でボタンを押しに行ってから上がることもできるという。
幸村警視は遺体の血の飛び散り方について、
「吊り上げられた状態で手首を切った」
「そうなると自殺以外の選択肢はなさそうだ」
「二人を殺した真犯人が自ら命を絶つことで事件の幕を下ろしたということですか…」
と推理した。
だがはじめは
「(絶対違う…!!
これは殺人だ…!!
自殺に見せかけた不可能犯罪だ!
でもあのネジの足りんエリート刑事はガチで"自殺"って思ってんぞ?
くっそ~!ここは俺がやるしかないのか!?
もう謎は解きたくないのに~!!)」
と思っていた…。
【はじめ、『異人館ホテル殺人事件』について言及!】
幸村警視の推理を聞いたはじめは水島の控室(デスペラード控室)に向かった。
葉山まりん、いつき陽介、そして佐木竜二もはじめについていった。
はじめはしっかりと確認しておきたかったことがあった。
はじめは水島が自殺したとはこれっぽっちも思っていなかった。
佐木には証拠の映像をちゃんと押さえてほしかったのだ。
そんなはじめは、20年前の事件…『金田一少年の事件簿』の事件『異人館ホテル殺人事件』について言及した。
「この事件では遺書を残して密室で遺体になって見つかった人がいて、それを担当刑事が自殺と決めつけたけど、実際はその刑事が犯人だった」
と、まりんに行ったのだ。
ちなみに遺体で見つかったのは文月花蓮で、本名は北見花江。
また犯人の刑事は花蓮の双子の姉だった…。
―― 双子という意味では『京都美人華道家殺人事件』の京極桜子・京極薫子姉妹と似てるなあ…。 ――
それはさておき、水島の控室にはまだ湯気がある温かい珈琲がポットの上までパンパンに入っていてどう見ても一人で飲む量ではなく、使っていないカップとソーサーが二組あった。
このことからはじめは
「珈琲ポットはホテルのルームサービスで持ってきてもらったもので、水島は"誰か"と落ち合うつもりだった。
その"誰か"こそ、この事件の真犯人"碧血鬼"。すり替えた本物の銃で水島に赤座光輝と綾野木ルカを射殺させ、その水島も自殺に見せかけて殺し、そして多分リュウ小野寺を東京で殺した」
と推理した。
【空中密室と大きな"見落とし"】
はじめが推理を展開している時に、幸村警視が現れた。
はじめが推理を話す前に幸村警視は言った。
「今、鑑識を呼び戻して現場を急ぎで調べた所、舞台の床に飛び散っていた血は明らかに4m以上の高さから滴り落ちたものだとわかった。
水島はステージ衣装に着替えたあと自分の体にワイヤーアクションの装置を装着してから遺書のメールを身近な人々に送り自動で吊り上がるウインチのボタンを押しに行き、自動的に設定した高さまで吊り上がって止まると覚悟を決めた後手首を掻き切って自殺した…
それ以外に考えにくい。
ワイヤーで吊り上げられている状態の水島のもとに10mはあろうかという天井から降りてきて殺害するような離れ業は困難。
かといって4mもの高さの脚立は舞台はもちろん楽屋のどこにもなかった。
つまりこの状況下ではどう考えても"他殺"はありえない!」
でもはじめは
「なるほどですねえ~」と、
ふんふんと頷きながらあっさり流していた。
さらに幸村警視は話を続けた。
「動機解明はこれからだが、水島は何らかの理由で小野寺を殺し、赤座、綾野木まで手にかけた。
つまり拳銃をすり替えたのはほかでもない水島本人。
トップランクのスターの彼がそんなことをするはずがないという"思い込み"はこの自殺によって覆された。
なぜなら彼は最初から自殺する前提でこの計画殺人を実行したのだから」
「どうです?金田一さん。
私の推理したこのストーリーは矛盾もなく実に整っているとは思いませんか?
これ以外の答えを導き出すにはいくつもの不可能なハードルを超えなくてはなりませんよ?」
・・・幸村の発言を受けてはじめは言った。
「整いすぎてる…そうは思いませんか?」
「私にはそのお芝居めいたストーリーが犯人が緻密な計画のもとに用意した台本のように見えてしまうんです。」
そして、水島の死については、
「"空中密室"
…といったところでしょうか?」
と言った。
…幸村警視が言うように水島の遺体発見現場は、
まさに空中の密室で密閉された部屋以上に接近が難しいゆえ、まさに不可能犯罪ということになる。
あくまで自殺でないと言い張るのなら…。
だがはじめは
「この事件には大きな"見落とし"がある気がする。
私はそれを突き止めたいと思っているだけ。
幸村警視にとっては自分は"過去の人"かもしれないけれども、
"金田一耕助"…
かつて名探偵といわれたジッチャンの名にかけて…ね!」
と、幸村警視に言った。
【幕の合わせ目は火薬のにおい】
「面白い。
我々は今夜中に現場検証を終えて残ってた関係者は明朝お帰りいただくつもりだ。
現場を調べたいなら警察のじゃまにならない程度に調べるがいい。
あなたの気が済むまでね。
せいぜい頑張ってください、名探偵のお孫さん。」
幸村警視はこう言って控室を去った。
いつきと佐木は、
はじめの「ジッチャンの名にかけて」発言が飛び出したことを喜んでいたが
はじめには幸村警視が言ったように残された時間はそれほどなく、真犯人に逃げられる前になんとしても犯人のトリックを突き止めなければならなかった。
ちなみにそのときこんなやり取りが…
いつき
「アナログだが推理メモはバッチリ取ってやるぜ!」
佐木
「映像記録ならおまかせください!」
まりん
「あたしも!名探偵の助手として!!」
はじめ
「…君は部下でしょ?」
( ゚д゚)ポカーン
・・・それはさておきはじめたちは水島の遺体が発見された舞台に向かった。
こっそり舞台袖を通っていたはじめは火薬の匂いに気がついて立ち止まった。
モデルガンの匂いでは、と佐木は言った。
まりんは、くんくんとにおいを嗅ぎ、幕の合わせ目が非常に匂っていることをはじめに言った。
しばらく考えたはじめは、
「そうか…
考えもしなかった…
俺たちは根本的な"見落とし"をしていたのかもしれない。
真犯人…『碧血鬼』の巧みな"心理的ミスディレクション"にまんまと誘導されていたんだ!!」
と言った…。
―― 綾野木は舞台上で水島に撃ち殺されたのではなく、
水島が赤座を撃った拳銃と同型の拳銃で綾野木の遺体発見現場で『碧血鬼』に撃ち殺されたのでは。 ――
そういえば20年前の『異人館ホテル殺人事件』では「双子」が鍵になっていたが、
今回の『函館異人館ホテル新たなる殺人』の「双子」は拳銃なのでは。
舞台の異様な火薬の匂いは、「綾野木の殺害現場が舞台の上」という印象づけ、かな。
それにしてもデスペラードの小野寺・赤座・水島は、綾野木と合わせて何をしでかしたのだろうか…。
次回でそれが明らかになる…かな?
そして水島の手首を切った控室にあったとみられる刃物についても、
今後のストーリーで例えば果物を食べるシーンがあると信じたい。
刃物が水島の控室にないことを知っている犯人が刃物を取りに行く時に他の部屋に刃物を取りに行ったなら、確定かな。
【ソース】
『イブニング』 2020.01.01 NO.01
『金田一37歳の事件簿』
『函館異人館ホテル新たなる殺人』
File46 空中密室
講談社 (P89~P111)