高遠遙一
 「地獄の傀儡師」の二つ名を持つ『金田一少年の事件簿』の主人公・金田一一の宿敵。

 現在『イブニング』で連載中の『金田一37歳の事件簿』では高遠は逮捕され特別拘置室にいるが
彼の意志を継ぐ「ゼウスのしもべ」が何人かいるらしい。

ちなみに「ゼウスのしもべ」の一人は『歌島リゾート殺人事件』で犯行を行ったが、はじめに謎を解かれ、とどのつまりで警察に逮捕された。
その人は高遠にアルテミスと言われていたことが明かされたが、刑務所にて差し入れのコンタクトレンズを使用したことにより始末された。
レンズにVXガスが仕込まれていたらしい。

 …さて、直近の『金田一37歳の事件簿・函館異人館ホテル新たなる殺人』の第10話…赤座光輝・綾野木ルカが舞台『箱館ウォーズ』の本番中に水島颯太により射殺され(?)さらにその水島も自殺に見せかけられて舞台で手首を切り天井に吊るされた状態で遺体となって発見された事件についてはじめは謎を解き関係者たちの前で謎解きを披露していたが、その最中にふと今回の事件について高遠の気配を感じたのだ。


 【本物の兇弾が放たれたのは…】

 「一つ大きな "謎"を明らかにしなければなりません。」
はじめがこう言うと葉山まりん
「それって!!
小道具置き場にあった水島さんのモデルガンを犯人がいつ本物の銃にすり替えたかってことですよね!!」
と言ったが、はじめ

 「それは"謎"でもなんでもないよ、葉山くん」と言った。

 …はじめが言うには、そもそも事件発生当初から犯人によって大きく"ミスリード"されていた。
 
 警察が考えた"事件の前提条件"…水島がすり替えられた本物のピストルで赤座と綾野木を舞台上で射殺してしまったということがそもそも犯人の計画した"シナリオ"であったという。

 はじめは舞台の袖のあたりを調べている時に舞台背景用の幕の合わせ目の左の方だけに強い火薬のにおいが残っていたことを関係者たちに話した。
 
 海枝博貴監督は
「舞台で使われた銃のものだろう?
丁度赤座や綾野木が水島の銃で撃たれたときその左側の幕は水島の方に寄せてあったから当然じゃないかね?」
と言ったが、はじめはこう言った。

 「本当にそうでしょうか?
 僕が見た感じでは舞台の水島さんと幕の間は結構離れてました。あの距離でそこまで強く火薬の匂いがつくとは思えません」
 「水島さんの銃は小道具置き場ですり替えられたわけではないんです!
 赤座さんが撃ち殺された時水島さんの銃はタダのモデルガンで、人なんか殺せる代物じゃなかった。
 では本物の凶弾はどこから放たれたのか。それが…
 ここなんです!左側に寄せられたこの幕と書割の間から真犯人は赤座さんを狙撃したのです!」


 はじめの推理に幸村真之助警視
 「バカな!銃を撃てば必ず銃声がするはずだろ?」と反論したが、
 いつき陽介がこれについて説明した。
 

 …いつきははじめに頼まれて電話でとある専門家に取材していたのだ。

 「舞台『箱館ウォーズ』で使われた22口径の自動拳銃であれば消音器をつけて撃てばかなり銃声は小さくなる」
という回答を得ていたのだ。

 「演出上銃を撃つ時は大きな効果音と音楽が鳴り響いていましたから銃声はほとんどかき消されたと思いますよ?」

 
 【はじめ、高遠の気配を感じる…!】

 いつきの説明を受けてはじめは

 「そう、水島さんは赤座さんを殺してなんかいないしもちろん綾野木さんも殺してない!
 彼女は舞台城壁で"撃たれた"時は、ちゃんと生きていたんだ。
彼女が殺されたのは滑り台をおりた直後…」

と言った。

 …犯人は綾野木が滑り台をおりた直後に彼女を至近距離で射殺していたのだ。
 
 特にいつきが取材したことによれば
 「22口径を至近距離で撃った時体を貫通するので雑誌越しに撃つなどして体内に弾が残るよう工夫したのではないか」
と専門家が答えていたとのこと。

 それを受けてはじめは
 「これはもう…相当に用意周到に準備された計画犯罪です!
 おそらく銃ひとつとっても海外へ行って何度も試写したり訓練したりして弾の威力を図ったりしたんでしょう。
 計画を立てた人物はただ者じゃない!
 恐ろしい頭脳を持つ天才的な…」

 この時はじめは、はっとなった

 そして
 「ともかく真犯人"碧血鬼"はとてつもない周到さと悪魔の知恵でこの恐るべき連続殺人をやってのけた…
 最初に東京で殺されたリュウ小野寺さんを手にかけたのも恐らくこの人物でしょう。

 また「綾野木と赤座の体内から発見された銃弾は間違いなく水島が舞台で手にしていた銃から発射されたものだった
」と幸村警視が言っていたことについてもはじめは、
 「説明する方法はたった一つ…
モデルガンと本物の銃のすり替えはこの舞台の上で行われたってことですよ」
と言っていた。

 そしてリュウ小野寺・赤座光輝・綾野木ルカの3人を殺害し、自殺に見せかけ罪をなすりつけ水島颯太を殺した真犯人・碧血鬼をはじめは指摘した…。


 【碧血鬼のミスは、水島のニセ遺書メール!】

 はじめが指摘した人物…それは、岡倉純だった。

  はじめは、
 「赤座が撃たれた後岡倉が水島に「銃貸せ!」と言って大通具に向けて撃ち、それが本物の銃であることを確認した時に
 「岡倉の本物の銃と水島のモデルガンをすり替えたのでは」
と言い
 「あの時の映像はこの佐木もしっかり撮ってますからひょっとしたらすり替えの瞬間が写ってるかもしれませんよ?
と付け加えた。

 またテレビ局を装ったいたずら電話も岡倉の仕業であり、それはアリバイ作りのため…岡倉のシナリオでは銃のすり替えはゲネプロ後の小道具置き場でなければならず、だからゲネプロ後にすぐ異人館ホテルからいなくなることで 「自分には銃のすり替えが出来なかった」という鉄壁のアリバイを手に入れようとした、ともはじめは指摘した。

 ・・・はじめは岡倉がホテルを出たことで大きなミスを犯したことを話した。

 それは水島の遺書めいたメールに
 『あのまま舞台が続けば着るはずだった最後の衣装を纏い』とあったが、岡倉が外出中岡倉を気遣った水島が海枝監督に
 「この白くて派手すぎる衣装はやめたたほうがいいんじゃないか」と自ら申し出た
ことを岡倉以外把握していたこと。

 衣装変更について、本番直前に帰ってきてすぐさま舞台に立った岡倉ただ一人が知らなかったので、
 はじめは「岡倉は碧血鬼だ」と特定した
のだった。
 
 岡倉は
 「あいつが勝手に言ったことなんて知るわけないだろ?
それで俺が犯人だなんてちょっとムチャすぎないか?
 証拠はあるのかな?
 そのトリックとやらを俺がやったっていう証拠!
 "知らない"だけで犯人扱いなんてごめんだな!」

と言ったが、はじめ

 「証拠ならありますよ。警察が調べれば必ずわかる決定的証拠がね…!」

 と言った。


 ―― 今回のはじめの反応から、
『アルテミス』に次ぐ、第2の『ゼウスのしもべ』登場フラグかな? ――


 ただ『碧血鬼』とは別に、その監視役(はじめに犯行を暴かれ逮捕される前に(あるいは後で)犯人を始末する役)が舞台上にいそうな予感がするなあ…。

 それにしても拳銃とモデルガンのすり替えの瞬間は、果たして佐木が撮った映像に映っているのだろうか…。
 はじめは『碧血鬼』に罪を認めさせるため、何か罠を仕掛けていそうだなあ…。
 実はすり替えの瞬間はなかった、とか…?

 でも碧血鬼は相当な銃の使い手なので下手をすると佐木について20年前の悪夢が蘇るかも、だなあ…。
 あのときは兄の竜太が…竜太が…(;8;)

 
 …そういえば綾野木と赤座が射殺されるシーンでは岡倉演じる土方歳三(トシ)は出てきてなかったなあ。
 覆面作家・三田村匠はもしかすると高遠遙一あるいは岡倉純かな?

 そして何より、『異人館ホテル殺人事件』にも『京都美人華道家殺人事件』にもあった双子要素。
 はじめは葉山まりんに20年前の犯人について警察関係者ということは言っていたが双子のことは話してなかったことがずっと気になるなあ。
 もしかすると、はじめが言う「決定的証拠」のヒント、かな?
 特に拳銃について…!

 …とにかく次回は、碧血鬼の最後の悪あがきに注目したい。


(※ソース
 イブニング 2020.02.11 NO.04
 『金田一37歳の事件簿』
 『函館異人館ホテル新たなる殺人』

 File49 碧血鬼のシナリオ
 講談社 (P45~P66))