「マスクで変装して最上階の部屋へ行った九条さんは、
どうやってまた20階のパーティールームに戻ったんだ?
 あの後パーティーが始まるまで高階層エレベーターを使ったのは数人の高階層住人とマンションのコンシェルジュぐらいしかいなかっただろ?」
 現在『イブニング』で連載中の『金田一37歳の事件簿』『タワマンマダム殺人事件』が展開されていて、主人公・金田一一が青年時代に活躍した『金田一少年の事件簿』を通して初のケースとなる3人以上の複数犯にして、あらかじめ犯人が分かっている倒叙ミステリー。
 この事件は、隣人・森下桃香のケータリングの手伝いを頼まれて彼女とともに後でやってきた会社の同僚・葉山まりんとある高級タワーマンションにやってきたが、パーティー主催者の「ヒナさん」こと美咲雛が、同じ高級タワーマンションマンションに住む姉小路牧子(マキさん)・九条美音子(ネコさん)・園森紗英(さーちゃん)のアラフォーマダムトリオに監禁された上、飛び降り自殺と見せかけて殺された…という事件に巻き込まれるというもの。
 特にはじめはこの事件についてマダムトリオが犯人だと最初から怪しんでいたようだ…。

 【傷心旅行とスーツケース…
ネコさん脱出トリックの全貌!(往路)】

 「それこそが美咲さんに化ける役に九条さんが選ばれたもう一つの理由であり
 美咲さんが『傷心旅行』に行かなければならなかった理由でもある…!
 そうでしょう?タワマンマダムの皆さま方?」

 はじめネコさんがマダムトリオの中で一番小柄で細身であることから、
 「旅行用スーツケースの中に入り受付の人に
最上階から1階に運んでもらうことで1階に行った。
 これこそが傷心旅行の最大の理由」
と推理した。

 ちなみにその様子はエレベーターの監視カメラの記録にあった。

 ―― 自分は受付の人がネコさんの変装かなと思っていたが、そうではなかったか… ――

 はじめの推理によると、トリックはこんな感じ。

 1.前もってヒナさんの名前でどこかの旅館かなにかに予約を入れる。
 2.ネコさんはヒナさんに変装し、ヒナさんのスーツケースを引っ張り出して用意した宅配伝票を貼り付ける。
 3.電話でヒナさんのふりをして受付に荷物のピックアップを頼む。
 4.玄関先の廊下に出てスーツケースの中に入って内側からスーツケースを閉じる
 5.何も知らず荷物を取りに来た受付の人が指示通り1階の荷物集配所に運ぶ
 
 ちなみにヨガインストラクターの竹腰悠也の話によるとネコさんの体の柔らかさは群を抜き、大型スーツケースなら入れるかもしれないとのこと。
 また受付にあった宅配便の伝票の控えを警察に調べてもらったが、筆跡が明らかにヒナさんのものではなかった。
 しかもヒナさん本人の指紋が一つもなかった…つまり別人がヒナさんのふりをして手袋をして書いたのでは、とはじめは推理した。

 【ネコさん脱出トリックの全貌!(復路)】

 はじめネコさんが1階に下りた後、どうやってパーティールームに戻ったのかも推理していた。
 鍵となるのは台車に載っていた4つの段ボール箱だった。

 マダムトリオたちはパーティーグッズを運んでいたと証言したが大きな段ボール箱4つ分のグッズはパーティールームにはなかった。
このことから、ネコさんが段ボール4箱の中に入っていた…箱の重なってる部分がくり抜かれ人1人入れるスペースがあり、そこにネコさんが隠れていたのではと推理した。

 
 …荷物集配所にてスーツケースから脱出したネコさんは、ダンボールの中身を空のスーツケースに詰め替えた後でさーちゃんが来るのを待ち、くだんのダンボール箱の中に入りさーちゃんが台車にてそれを運ぶことにより、パーティールームに戻ることができたのだ。

 その証拠はネコさんの髪の毛で、
 「問題のスーツケースを宅配便業者から回収して髪の毛一本逃さぬよう中身を厳密に調べたら出てくるだろう」
真壁刑事が言っていた。
 

 【墓穴を掘ったさーちゃん…
カラオケで見逃したこと!】

 「ちなみに美咲さんの転落ですが、パーティールームのある20階と38階とじゃ地面に叩きつけられたときの衝撃が全く違います。いま鑑識にどれくらいの高さから落ちたか調べさせているところです」

 真壁刑事がこう言ったとき、はじめはこう言った。
 「それと確か園森さんがカラオケを歌い終わった直後にカーテンを開けて窓の外を見て悲鳴を上げましたよね?
 上から人が降ってきたって」

 「そうよ、私は確かに見たわ」とさーちゃんが発言したときはじめは

 「はい墓穴掘りました―!!」と言った。

 ―― しかもさーちゃんの墓が…( ゚д゚)ポカーン ――

 …実はあの時は、ヒナさんはとっくに落とされた後だった。
 はじめの話によると、それは秒単位でわかるとのこと。

 …さーちゃんたちが使っていたカラオケは通信カラオケで、
 さーちゃんが歌い終わった時間も秒単位でわかるとのこと。
(※ちなみにはじめは「恐ろしやネット監視社会!!」と言っていた。)

 真壁刑事の話によれば、さーちゃんが歌い終わる時間よりもヒナさんが落ちるほうが21秒早かった。
 つまりさーちゃんはまだマイクを手にとっていたので
ヒナさんが落ちるところをさーちゃんは窓から見られるはずがなかったのだ。

 これを聞いたマキさんは「これ以上言い訳のしようがない」と観念し、ネコさん、さーちゃんも観念した。
 真壁刑事がダンボールを開けるとマスクがあり、
「こいつぁーよくできてる!これじゃ瞬きもできんだろ」と言っていた。


 【はじめが最初からマダムトリオが犯人と気づいた理由!】

 「まいったわ…いつから気づいていたの」というマキさんの言葉
 
 「最初からですよ」と答えたはじめ
 
 …はじめがそう言った理由。
 それはシャンパンの匂いでもスマホでもなかった。

 「ハイヒール」だった。

 現場にはハイヒールが落ちていたが、
自宅ベランダから飛び降りるのにハイヒールと履いたまま飛び降りるのはどう考えても不自然だったから。

 ネコさんは自分もハイヒールを履いていてパーティールームでは自然だったので気が付かなかった。
 だがはじめはハイヒールが現場にあったことから「ヒナさんはパーティールームの何処かから落とされた」と推理できたのだ。

 これを聞いたマキさんは
 「すっごいわ!!あんた本当に探偵に就職した方がいいんじゃない?」と言ったが、
 はじめは
 「……いや、『それだけ』はちょっと……」
と言っていた…。

 ―― はじめが探偵から距離を置こうとしている理由はなぜ…?
謎が更に深まったなあ… ――


 【マダムトリオは実はヒナさんが…】

 「僕にはどうしてもわかりません。
 美咲さんといつも一緒であんなに仲が良かった3人がどうして…」
 
 こうマダムトリオに聞いた竹腰先生だったが、マダムトリオは笑いだして

 「悠也先生ってば…!こんな時にそんなふうに言えるなんてないか憎めないっていうか、
やっぱり悠也先生は悠也先生よね!」

と言った。

 そしてさーちゃんは言った。

 「でもごめんなさい。あたしたちと美咲雛は仲なんて良くなかったんですよ。
 むしろ大嫌いだった――
 あたし達3人はずっとあの女を殺してやりたいって思ってたんですもの!」

と…!

 
 ――ヒナさん殺しのきっかけは、タワマンの隣のホテルの展望台で見た不倫現場…
 すると事件を暴かれた3人は、ホテルで何かやらかしそうな予感がするなあ… ――

 例えば、展望台で暴れそうな予感がするなあ。

 それに今回の事件のトリックも高遠遙一が絡んでいるかどうかも気になるなあ。
ホテルの従業員あるいはタワマンに高遠遙一の手下(ゼウスのしもべ)が紛れ込んでいそうな予感がしてならないなあ。

 とにかく、マダムトリオの最後の悪あがきに期待したい。


 【ソース】
 イブニング 2019.01.22 NO.03
 『金田一37歳の事件簿』
 タワマンマダム殺人事件
 File24 最初から
 講談社 (P185~P207)